エピローグ

 

2001年6月

ある晴れた土曜の夕方

 

ご主人にせがんでやっと散歩に連れ出して貰うと、おいらは一目散にいつもの散歩コースとまるっきり反対方向に向かってご主人を連れて走り出した。

彼女の匂いがだんだん強くなる。

海からの風や排気ガス。街が吐き出す様々な匂いの中で、彼女の匂いはおいらにとって特別なのだ。

人を想う事を教えてくれた。

ちょっぴりそれまでの自分のことを見えるようにしてくれた。

彼女のことを笑う奴、バカにする奴、危害を加えようとする奴がいたら、夜中はちょっぴり用心した方がいい。

今年も嘱託警察犬として何度も修羅場をかいくぐってきたこの牙は多分ナイフよりも的確に目標を捉えるよう訓練されている。

モチロン命令なくしてそんな真似はするつもりはないのだが・・。

 

角を廻り、くねくねした路地を進み、おいらは古びた洋館の門をすり抜け、庭の爽やかな初夏の花の匂いのする花壇を蹴散らし(ゆりえさんとご主人に後から叱られるのを覚悟の上で)玄関の扉に前足をかけてこう吠えた。

「お帰りなさい!沙世子!」

 

そして、扉は開かれ、涼やかなアーモンドアイ。

旅立ったときと変わらずに、おいらを見つめて晴れやかな笑顔で叫ぶ。

「ただいま!あ〜る!」

 

「あ〜るの考察」(完)

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この作品はTV版『六番目の小夜子』から発想を得た二次創作作品です。
著作権はこれら作品の作者にあります。無断転載・複製・再配布などは行わないでください。

 

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