12.向日葵

 

太平洋高気圧がその圧倒的パワーで雲を吹き払い、太陽がジリジリと地面を焼く頃。

おいらは最近ご主人の非難にもめげず、家の裏のクーラーの室外機の側に穴を掘って寝そべっている。

日陰の土が水分を含んで気持ちいい。

 

最近の沙世子は元気だ。

気持ちが以前とは打って変わって、明るく高揚しているのが引き綱を通して伝わってくる。

 

「今年の小夜子は二人いる。あなたと私。私とあなた。か・・・」

 

その日、おいらと沙世子はいつものように早朝の散歩に出ていた。

日中は暑いが、朝の早い時間はそれでも幾分かしのぎやすい。

海岸縁の小道を公園に向かい小走りに駆けていくと、まずおいらが、続いて沙世子が気づいた

「津村さ〜ん。」

公園のブランコの方から声がする。

 

潮田玲を見た瞬間、おいら仲間の犬かと勘違いしてしまった。

こっちに駈けてくる仕草がまるで犬のようだったからだ・・・

どうも沙世子に気を取られておいらの姿は目に入らなかったらしく、手前3m位から急ブレーキ!

「おぉっっとぉ!な、なんだぁ?」

「どうしたの?このジャーマンシェパード。」

おぉ久々の犬種フルネーム読み・・・。

しかし、おはようも言わずに質問かい?

「おはよう。あ〜るっていうの。この街に来てから最初の友達。」

「ふ〜ん。触ってもいい?」

「うん、大丈夫。」

「おはよう!あ〜るぅ」

結構慣れた手つきでおいらに挨拶してくれる玲。

やはり少し怖いのかちょこちょこっと撫でてくれると沙世子の側に寄っていく。「やっぱ大きいね。私、普通の雑種とか触ったことあるんだけど、シェパードは初めて。」

「慣れると全然平気。この子はお利口さんだから。ね、あ〜る?」

沙世子から褒められるとちょっとウレシイ。

尻尾をぱたぱたさせてしまう。

「そか、んじゃ改めてよろしくぅ!あ〜る。」

玲は匂いから判断するに根本的に邪気のない、人懐っこい性格らしく、いつの間にか沙世子と同じようにおいらと遊べるようになっていた。

「い〜な〜大きな犬。うちマンションだから、犬猫飼えないんだよね。」

「私も。今は飼ってないわ。」

と沙世子。

「えっ、なんでなんで?なんでこんな大きな犬連れてるの?」

「ご近所の犬なの。実は私の方が散歩に行ったりして遊んでもらってるわけ。」

「ふーん。そうなんだぁ」

 

玲と話している沙世子は素直に微笑んでいる。心の殻がなくなっている。

 

不思議な感覚がおいらを襲う。

沙世子に足らないモノが玲にはあり、玲にないモノが沙世子にある。

二人で一人。

 

朝日が彼女たち二人の向こうから射し込んできた。

光の中で二人が一つになったような気がした。

 

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この作品はTV版『六番目の小夜子』から発想を得た二次創作作品です。
著作権はこれら作品の作者にあります。無断転載・複製・再配布などは行わないでください。

 

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