7.梅雨の晴れ間
廻せ 廻せ 水ぐるま けふの午から忠信が 隈取紅いしゃっ面に 足どりかろく 手もかろく 狐六法踏みゆかむ 花道の下 水ぐるま・・・・ 北原白秋「柳川風俗詩」梅雨の晴れ間より
黒南風(くろばえ)という言葉がある。 梅雨の頃の南風のことだ。 その黒南風が吹いている・・・。
おいらには匂いで街の雰囲気を感じ取る能力がある(おいらだけ持っている訳ではないが・・) この年の黒南風は妙な匂いを引き連れてやって来た。
日曜日。 おいらは、散歩の途中で小学生の男の子の体から微かに沙世子の匂いを感じた。 嗅覚以上の第六感でだ。
誰かを待っている様子。 「沙世子かな?」ご主人を引っ張りながらおいらは漠然と思った。
最近の彼女は不機嫌きわまりない。 つまらないことでゆりえさんと口論してる。 やはり前においらに話してくれたように、自分のしたことに後悔しているような雰囲気。 だが一方で潮田とかいう同級生から提案された「二人の小夜子」の提案に心を動かされているのも事実のようだ。 そのことプラス馴染めないクラスの雰囲気。 いわれのない中傷、誹謗(通学帰りの中学生の会話聞けばおいらにだってわかる。犬の聴力は人間の約四倍あるんだから・・) 耐える事を強いられる毎日にうんざりしているご様子。 特にやっと自分の殻を剥がそうとしているこの時期には・・・。
途中、街の雰囲気が今日に限ってどうも怪しいことに気づく。 若い連中の(人間も、犬も)動きが獰猛だ。 荒い。 どこかエネルギーの捌け口を求めてる。 おいら自身も気持ちのコントロールが難しい。 散歩で、さんざんご主人を引き回して帰ってきた。
夜に入って寝床に入ったが、どうにも寝付けない。 風が生臭い。 体中にまとわりついてくる。
おいらの首の後ろの毛がヒリヒリと逆立ってきた。 この感触は・・・?!
そして・・・
なにかが・・・
なにかが・・・
なにかが・・・
来た!!
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この作品はTV版『六番目の小夜子』から発想を得た二次創作作品です。
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