8.GO!

 

突然、赤い服の女の子が現れたかと思うと叫ぶ!

「おねえちゃんを助けて!」

 

瞬間おいらは小屋を飛び出し庭を突っ切った。

扉が開く。

「なぜ?」という疑問さえ浮かばない。

人にあらざるものが動くとき。

そいつは無意味だ。

 

「場所はどこだ!」

おいらはどなる。

「公園!いつもの!」

後ろから声が聞こえる。

 

公園までの道を一気に駆け抜ける。

体中で野生の力が覚醒する。

祖先の狼が狩をする時の狂気の力。

公園への最後の角を抜け、スピードをトップギアに入れる。

傍らに複数の仲間の気配。

驚いたことに、そこにはドーベルマンのataruとボクサーの龍が併走している。

よく競技会で一緒になる警察犬仲間達だ。

「なんでおまえらが出て来るんだよ!」

おいらがどなる。

二頭の家ってこの近くじゃなかった筈。

「呼ばれた・・」

ataruが無愛想に返事をする。

「明後日競技会があるよって近くの犬舎(警察犬訓練所)に呼ばれて訓練してたんですわ。そしたら、女の子が襲われたって声が聞こえて扉が開いたんで、すっ飛んできたって案配ですわ!」

龍が手短に事情を説明してくれる。

 

沙世子の匂いが近い。

公園内の暗闇を三頭同時に突っ切る。

昼間の小学生の匂いもする。

それ以外の匂いは四,五人。全部男だ。

危険な匂いがプンプンする。これは・・薬物?!うわ、やばい。。。

 

「探知(コンタクト)!女の子一名と子供一名は味方。それ以外は全て敵。各自自己判断にて突入後、全力にて味方を保護。必要があれば襲撃許可!その後速やかに撤収する!」

先任順は龍が上だが、ここはおいらの縄張りだ。

今夜のリーダーはおいらがやらせてもらう。

「了解!」

二頭が答える。

群になると犬族は攻撃力が倍以上に跳ね上がる。

協力し、連携しながら攻撃するため、波状攻撃態勢が取れるからだ。

 

小さな丘を一気に駆け抜け、男達の真ん中向かって三頭同時に飛び込んでいった。

 

「GO!」

 

おいら達の戦いが始まった・・・

 

勝負は一瞬でついた。

吠える声にびびっていた男達はその姿を見せたおいら達に心底驚いたらしい。そりゃそうだろ。

大型犬が三頭同時に暗闇から戦闘態勢で飛び出したんだから・・・

「うわぁぁぁー!!」

恐怖の叫びをあげながら、男達が逃げようとする。

龍が援護に回り、おいらとataruがアタッカーだ。

 

最初の一撃で二人が倒れる。

おいらは、相手の手首にがっちり牙を食い込ませて凶器を捨てさせる。

男の手首の腱か骨がおかしくなったのだろう。

「ぶつっ」

という音が顎に伝わる。

急にへたり込んだ男から飛び退いて、瞬時に様子をうかがう。

龍が沙世子に一番近い男に飛びかかるのが見える。

その瞬間沙世子が崩れ落ちた。

やばい!気を失った!?

残りの二人は逃げようと後ろを振り向いた瞬間。

おいらとataruに尻と腿を咬み裂かれた。

逃げる犯人の足を止める要領だ。

 

ataruが冷たく倒れた男の腕を食いちぎろうとしたので、

「撤収!」

と叫び、再び来た道を走り去る。

 

沙世子のことが気がかりだったが、今の状況で人に見つかったら三頭とも薬殺処分になってしまう。

 

公園の噴水に飛び込み体を洗うと血の匂いを少しでも消すため芝生を転がりまくる。

他の二頭も同じように体を洗いながら、帰り支度をする。

ataru

「彼女きれいだったなぁ」

と惚けたように言う。

「今度絶対競技会連れてこいよ。俺、がんばるから」

「機会があればな」

とおいら。

「二人ともありがとう。おいらだけじゃあれだけ素早くやれたかどうか判らなかったよ。」

「かめへん、かめへん。次回の競技会で借りは返してもらうわ。」

龍が明るく答える。

「それより、早よ犬舎に戻らんと大騒ぎになるで。ことによったら出動かかるかもしれへん。」

 

二頭と別れ家に戻り開いていた扉をくぐった瞬間。

窓がさっと開きご主人が、

「あ〜る。出動よ!」と叫ぶのが聞こえた。

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この作品はTV版『六番目の小夜子』から発想を得た二次創作作品です。
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