「MISSION−5」

 

〜1.時の旅人〜

夏本番!これから一気に暑さが加速するぞ!っという気配が濃厚に感じられる七月のある朝。むっとした高密度の空気に弄ばれて、おいらは熊本空港の到着ロビーの外につながれていた。誰を待っているかというと・・・。

ピクピクと鼻が勝手に動き出す。日向で遊ぶ子犬のにおい。まだ健在みたいだな。

「ひっさしぶりねぇ!あ〜る。元気してた?」

見上げると見間違えるほど垢抜けて綺麗にはなったが、相変わらず明るい潮田玲の向日葵のような笑顔がそこにあった。おいらは元気よく返事をすると沙世子とは正反対の性格のこのお嬢さんに頭をこすりつけて甘えてみせた。

潮田玲。

数年前。おいらと沙世子が岬市で経験した「六番目の小夜子」の物語。

その中で知り合った潮田玲は沙世子の親友となり、一緒にこの熊本の沙世子の実家にも訪れている。そんなこんなで離れ離れになった現在も連絡を取り合っているのだ。

「でも、どうしたの?玲。急に会いたいだなんて。こんなに早く夏休み?大学まだ前期試験とかやってるんじゃないの?」

自分の事を棚に上げて沙世子が早速問いただし始めた。沙世子は玲の事となるとどうも保護者意識が働き始めるらしい。自分の持っていないものを沢山持っている玲。そんな玲を守ってやりたいと思っているんだろうか。

「ん〜。ま、いいじゃん。おいおい話すよ。それより暑いねぇ熊本は・・・。ね、今日は沙世子時間あるんでしょ?ホテル行くまで熊本案内してよ。中学の時から一度も来てないんで忘れちった。」

「相変わらずねぇ。ま、いいでしょ。大学は昨日で試験終わったし、KSARも今日は非番だし、バイト先の訓練所には連絡入れたし、玲に付き合うわ!」

「やった〜!さっすが沙世子!」

「もぉ・・ちゃっかりしてる。あ、玲。お仕事忘れないでね。その前にやるべき事があったでしょ。」

「あっと。いけない、いけない。じゃ、私預かり書控渡してサインしてくるね。」

はて?お仕事?

それに玲の身体にくっついてるこの懐かしいというか忌まわしいというか判断しかねる仲間の匂いは・・・?

まさか・・・あいつら!?

遠くから声が聞こえる。

「よぉ!久しぶりやぁないですかぁ。あ〜るはん」

こ、この関西弁。

「沙世子さん。綺麗になった。」

ぼそっとつぶやくこの唸り声。

振り返ると犬専用のケージが二つ。

「六番目の小夜子」の物語で行動を共にした警察犬仲間。ボクサーの龍とドーベルマンのataruがその中に収まっていた。

「お、おまえらなぁ!」

「は〜い!」

「呼ばれた」

おいらは大きく一つため息をついた。

「それにしても玲が災害救助犬のボランティアしているなんて全然知らなかったわ。」

「うん、私も最近サークル入って活動始めたばかりだったから・・・。でもびっくりしちゃった。まさか初仕事が沙世子のところにこの子達連れて行く仕事だなんて・・・」

第二空港線を市内に向けて、沙世子の運転するフォレスターS/tbは滑るように進む。

「沙世子、運転上手いね。おまけにこの車もかっこいいじゃない?」

「中古よぉ。聖叔父さんが空いてる時は乗り回してるの。叔父さんの趣味で色々手を加えてるみたい。私はあんまり気にしてないんだけどね。でも熊本は車がないと不便で不便で・・・。山の方とか海辺とか、雨の中でも雪の中でも出動しなきゃならないし。とにかく何時でもどこにでも動ける車が一番いいのよ。それになんと言っても犬を運ばなければならないしね。」

そんな沙世子達のおしゃべりに耳を傾けながら、おいら達も互いのその後の消息を教えあうのに忙しい。それによると・・・なんと龍もataruも警察犬を先日リタイヤしたという。

「なんちゅうても、この年になるとハンドラーがどんどん換わりよるのが辛うて辛うて。仕事で折り合いつけるのがプロでっさかい、なんとかやってきたんやが、ここらへんが警察仕事の限界かな?思いましてん。」

「ちょうどその頃KSARから災害救助犬の委譲依頼がわてとataruはんのいる訓練所に届いて。享卦所長に直談判したわけや。」

「どうやって?おいら達の言葉で言っても相手が判る訳ないでしょう。龍さん」

「いやあ簡単簡単。二日ばかりメシ食わんとおとなしゅう小屋で寝とったら所長やって来て『そろそろ年だからな。あ〜るみたいに災害救助犬目指すか?』って言い出してな・・・」

決して災害救助犬が警察犬より楽な仕事ではなく、いやむしろ大変な面もあるんだが、頭痛がしてきたのでそれ以上経過を聞く気が失せてしまった。

「ようやっと災害救助犬の基礎訓練を受け終わった途端、今度は玲ちゃんがやって来て災害救助犬のハンドラーになりたい!なんて言い出して・・・。丁度その頃、ちゃっかりataruもわてと同じ手つこうて警察犬から災害救助犬に職種転換しよってん。やからこの三頭・・やない二頭と一人は時を同じくして同じ道を目指したちゅう訳や。」

うーん。おいらが歩んできた道が意外な連中を引き寄せたと言うべきか?

「ギュー!」

物思いにふけるおいらと能天気な二頭。ついでに玲のおでこを犠牲に車は急減速した。ABS(アンチロックブレーキ)が効いているのでスリップ量は大した事ないが、おいら達三頭は後部座席に投げ出されてしまった。

「な、なんなんだよぉ!沙世子!」

「大変!玲、事故よ。」

沙世子の示す方を見る。10m程先でホンダレジェンドと10tトラックが路肩に止まっている。

レジェンドはトラックと路側帯に挟まれて身動きが取れなくなっており、その脇にもう一台、ワンボックスのエスティマが止まって、数人の男が車を取り囲んでいる。

しかし・・・。

なんか雰囲気が怪しい。周りの空気に緊迫感がない。

「わ、大変だ!私行って様子見てくる。」

玲が車外に出ようとしたので、おいらとataruはするりと彼女が閉めようとしたドアの間から外に飛び出た。

「もぉ、駄目でしょ。車の中にいなさい。」

むくれる玲の声を聞き流し、おいらはataruと共に事故車の方に駈けて行く。

「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」

玲の問いに答えず、男達は車の後部座席から一人の初老の男を乱暴に引きずり出そうとしている。

この匂い。日本人の体臭じゃない。

事故車の脇を車がビュンビュン通り過ぎているが、10tトラックの車体がブラインドになり、携帯電話で連絡中の沙世子でさえ異常に気付いていない。

「何してるの?あなた達、誰?」

玲が雰囲気の異様さに気付いて声を荒げる。

おいらの背筋の毛がサァーっと逆立っていく。喉の奥から搾り出すような唸り声が出てくる。こいつらの匂いを嗅いで体がひとりでに反応し始めたのだ。

先頭にいた男が手を後ろに回し、何か黒い筒を取り出すのを見た瞬間。おいらは凍りついた。それは奇妙な形はしていたが間違いなく銃、サブマシンガンだったからだ。

「なによ!?それ!」

玲の叫びとも悲鳴ともつかぬ声が響く前に、おいらの横を一陣の黒い疾風が駆け抜けた。

男が玲に銃口を向けようとした刹那、疾風は銃を持った男の手元を掠め腹部にぶち当たる。

男はすぐに立ち上がったが、もはやその手首は用を成さぬほど食い千切られている。

ataruだ!

負けずにおいらも後方からレジェンドのルーフへとジャンプ。そこから男達の中に飛び降りた。狙いは引きずり出された初老の男に手をかけている二人。

一息で片方の手首に噛みをくれてやり、もう片方の相手には渾身の力をこめて後ろ足でキックを見舞う。よろけたところをataruが待ってましたとばかりに太ももに食らいつく。

「玲!あ〜る!」

玲の声に気づいた沙世子がこちらを見て警戒の叫びをあげる。

龍がのそりと沙世子の脇から離れた。

ataruの方は既に別の日本人らしいナイフを持った男と大立ち回りを演じている。

相手の攻撃をかわしながら、ナイフを持った腕に噛みつき引きずり回すataru。

取り落とした銃の方に手を伸ばそうとする男にはどこからか現れた龍の巨体が立ちふさがる。体当たりされた相手はその牙で腹の脂肪を削りとられて2mほど飛ばされた。龍は悠々と振り返り、銃を口にくわえると見せつけるようにバキバキと音をたてて噛み砕いてみせた。男達の顔色が変わる。他の銃を引き抜こうとした時。

「シュポーン!」

晴れた青空に発煙信号弾の煙が真直ぐ伸びていく。同時に発煙筒が道路に投げ込まれ、何事かと脇を通る車が次々にスピードを緩め出した。

控えめな口笛の音を合図に男達はエスティマに飛び乗り走り去る。

あっという間の出来事だった。

「玲!大丈夫?怪我はない?」

沙世子が発煙信号弾の筒を持ち、呆然と車を見送る玲に走り寄る。

「私は大丈夫。ataru達が気づいてくれて助かった。それより、あのおじいさんが車に乗ってたの・・」

二人は玲と同じく走り去った車の行方を目で追っている老人の方に駆け寄った。

「お怪我はありませんか?」

ゆっくりと振り向いた老人の顔を見て玲は不思議そうにつぶやいた。

「おじいさん。どっかテレビに出てなかった?」

「もしかして・・。あなたは元大統領のフジノ氏ではありませんか?」

英語に切り替えた沙世子の問いに、老人の以外にしっかりしたバリトンの声がかぶさる。

「いかにも。君達の勇敢な行為のおかげで私は命拾いしたようだな。」

日本語だった。襲われたのは元P国大統領で亡命中のケン・ペトキ・フジノ。その人だったのだ。

その日の夕方。蝉時雨がうるさいほど降り注ぐKSAR本部。伊那教授の研究室。クーラーが唸りを上げて暑気と戦っている。

やっと県警本部での事情聴取が一段落してKSAR本部に到着したおいら達は、思い思いの場所(ataruはまぁの机の横、龍は玲の座る椅子の前、おいらは沙世子の指定席の研究机の脇)に寝そべり、くつろいでいた。

あの後10分ほどして、あたふたと県警のパトカーが駆けつけた。

レジェンドを運転していたドライバー(県の職員らしかった)は銃を見せられておとなしく車の中にいたので、かすり傷程度で済んだのだが、問題はおいら達。

なんといっても男達の返り血浴びて体中真っ赤だったし・・・。

幸い、ドライバーとフジノ氏の証言。男達が残していった銃などが発見され、誘拐未遂事件として大騒ぎになったせいで薬殺処分は免れたのだったが・・・。

「あ〜〜!もう!警察ってぇ!何回同じ話すりゃ気が済むんだよぉ。」

ため息混じりに玲がつぶやく。

「しょうがないわね。なんたってあんたら新聞が喜びそうな事件ネタばら撒いた上に、元大統領助けちゃったんだから。」

まぁがおいら達の夕食のドッグフードを食器によそいながら面白そうに言う。

「まぁ、教授は?」

「昼頃から県警本部。KSARは災害救助犬じゃなくてケルベロスを飼っているのかって評判になってお目玉食いに。」

ため息混じりに二人は苦笑。

「Marcyさんってまぁって言うんですか?」

玲、唐突に尋ねる。

「Yes! なんで?」

「いや、なんとなく中学の時の同級生に雰囲気似てるなぁと思って・・・」

「そうか、花宮さんにね。でも、そうかなぁ?そんなに似てる?」

「美人はどこにでもいるものです。」

「だれが美人だって?」

のっそりと伊那教授が部屋に入って来た。疲れ切った様子でおいら達を見渡すとソファにどさっと座り込む。

「伊那教授ですね。潮田玲です。千葉SARより委譲依頼のあった災害救助犬二頭と共にKSARにボランティア研修に参りました。指導教官の空神(そらがみ)先生よりご連絡差し上げているはずですが・・・。」

「え、あ、ああ。空神先生からメールと電話でご依頼受けてますよ。潮田さんね。沙世子君の友人とか。ようこそKSARへ。しっかり学んで帰ってください。ただし、今朝みたいなことのないよう気をつけてね。」

「はい!よろしくお願いします!」

元気のいい玲の返事。

「え、玲。研修でこっちに来たの?そんなこと一言も・・・」

「今朝、沙世子に説明しようとしたらあんなこと起こっちゃって。ごめん、黙ってて・・」

「それはそうと・・・。君達が今朝相手をした連中のことを報告しておこう。県警の知り合いに聞いた話では大変な連中みたいだぞ。どうもP国陸軍が絡んでいるらしい。」

「P90」

ataruがぼそっとつぶやいた。

「なんじゃそれ?あの変な形の銃かい?」

おいらの問いに龍さんが代わりに答える。

「FN社製の特殊部隊向けサブマシンガンでっしゃろ?日本大使館占拠事件でP国陸軍が使用してその筋の人たちに急に有名になったそうでっせ。しかし、性能はともかく噛み心地は大したことおまへんでしたなあ。それにあの時、わてとataruには相手がどんなにうまく隠していても銃の火薬の匂いで10m先から危険や判ってましたさかい。そやろ?ataru?」

「なんでそんなに詳しいんだよ?ataruも龍さんも・・・。」

「いやぁ、わての場合は引退する直前に千葉県警のSATチームと共同訓練受けたとき講習受けましてん。ハンドラーは居眠りしよったけど・・・。ataruは習志野の陸自第一空挺師団の警備と特殊任務にしばらく借り出されとったから、もっと詳しゅう知ってますわ。」

「あんたら、災害救助犬じゃなくて軍用犬(K−9)にリクルートした方が向いてるわ・・・。」

呆れたおいらは教授の言葉に耳を傾ける。

「じゃあ、あの元大統領を連れ戻しに軍隊が?」

沙世子の問いに教授は難しい顔で

「事はそう単純じゃない。本当の軍隊が日本国内で事件を起こせば大変な国際問題だ。こっそりと事を運ぶには、軍を辞めたOBや一時的に除隊した本職の連中を民間人として送り込んで、あくまで隠密裏に連れ戻す算段をしないといけない。個人レベルでできる仕事じゃない。

僕の私見だが、どうも今朝の事件は裏で話がついていたような気がする。警備がまったく付かなかったのも変だし、襲われた車が県の公用車というのも妙だ。おまけに県警内部ではウチが、KSARが邪魔をしたような雰囲気で話をされるんで参ったよ。」

「そんなぁ!私達が何をしたって言うんです?」

玲のむくれた発言に教授もうなずく。

「しかも、あれだけの騒ぎがあったのに・・・。まぁちゃん、今届いた夕刊見てよ。」

「なんなの?どこにも書いてないわ!」

まぁの意外そうな声。

「県警はKSARが事件を起こしたようなことを言って、それを隠すために報道規制をしたようなことを言っていたが、そうじゃない。きっと何かあると僕はにらんでいる。」

二人の表情に怒りと不満が徐々に現れてきた。

「じゃあ、あの元大統領はどうなるんです?折角日本に亡命してきたのに。彼がP国で何をしたというんです?」

玲の問いにまぁは冷く

「軍部との癒着による圧政。そのせいで死んだ人間は何千人単位って言われているわ。」

「そんな・・・。」

言葉を失う玲。「ま、係わり合いたくない人ではあるな。でも安心しなさい。もう二度と会うこともないだろう・・。」

「そうだよ。気にしない気にしない!」

沙世子が強いて明るく声をかける。

でも、おいらも含め皆、なにか心に引っかかるものを感じていた。

外では相変わらず蝉時雨。今年はクマゼミばかりがやたら元気に鳴きまくっている。やつらの寿命ってあと何日なのだろうか?

「玲。なにを考え込んでるの?さっきのこと?」

緒方家。午後十一時を回ったところ。玲とataruと龍は大事をとって今夜は緒方家に泊まることになった。夕食後、二人は積もる話をしに部屋に引き上げた。ひとしきり近況を報告しあったところで沙世子は気になっていることを切り出したのだ。

玲の様子がおかしいのは、会った時からおいらも気付いていた。無理に明るく振舞おうとしているのがすぐわかる。ま、それが玲の良いところでもあるんだが・・・。

「ん、んん?なんでもないよ。」

「嘘!玲はなにか隠そうとするとすぐ判る。中学の時から、六番目の小夜子の時からそうだったよ。なにがあったの?なんで熊本に急に来る気になったの?教えて、玲」

玲は部屋を出て、おいら達が寝たふりをしている土間の方に向かった。そっと戸を開け暗闇の中でじっとしている。

「玲・・・」

「秋・・とね。」

「え?」

「秋とね。別れた・・・。」

「リーン、コロコロ、リーン・・」

こおろぎや夏虫共の鳴き声が一段と大きく聞こえてくる。

「グァ、グァ・・」

と蛙の声も加わっていて、夏の宵闇は決して無音のまま過ぎていくわけではない。

おいら達は揃って耳は立てて、そのくせ顔は前足の間に埋めて狸寝入りをしていた。

沙世子はそっと、黙って、玲の横に腰掛け、闇の中を見透かしていた。

今は、どんな慰めを言おうと彼女の心を傷つける。

関根(唐沢)秋。

玲の幼馴染にして大切な人。二人目の「六番目の小夜子」にして妨害者。

のっそりと、隣で横になっていた龍が立ち上がる。

「わて、こらえ性ないさかい・・・。」

「呼んでる・・・。」

ataruも、こちらは音も無く、しのびやかに玲の傍に寄っていく。

そしておいらも・・・。

「あんた達。聞いてたんだ。」

玲の瞳が涙で淀んでゆく。

「秋。カナダに行きたいって。野生の動物。写したいって。でも、でも私。そんな秋。本当の秋じゃないような気がして。近所の猫や犬を必死に捜していた頃の秋が懐かしくって。秋は秋で色々なこと考えてて、それは判るんだけど。けど・・・。私。秋に負けないようにがんばってきたのにぃ・・・。」

玲の嗚咽がおいら達の胸に痛いくらい響いてくる。

「玲」

優しく、優しく沙世子がささやく。

「秋君の為に。それだけの為に、玲は今まで生きてきたの?」

「ち、違うよ。ち、ちがうけどぉ・・・。」

「玲。今、秋君とあなたとの関係って、何年か前に岬市の駅で別れた私とあなただと思うの。お互いが本当に相手のことを想っていれば、きっと・・・また会えると思うよ。私とあなたみたいに。今はちょっと別のこと追いかけるのが大変なんだよ。関根君。」

「あはぁ、沙世子。秋、今は関根じゃなくて・・・」

「そっか。唐沢君になったんだよねぇ。気付かないうちにみんなも変わってるんだろうなぁ・・・。」

沙世子のささやきで、また思い出したのか声を潜めて懸命に涙をこらえる玲。

いつも元気印をしょっている彼女の背中は、今は一人の儚げに打ち震える小さな少女の背中にすぎない。

「玲。いいよ。泣いても。」

「いつか私に言ってくれたよね。玲。『ただ泣きたい時がある』って。今がその時だと思うよ。思いっきり泣いていいよ。玲。」

「沙世子ぉ・・・」

玲が沙世子に抱きついて、ひとしきり泣いて落ち着きを取り戻した頃。

電話が鳴った。

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 この作品はTV版『六番目の小夜子』から発想を得た二次創作作品です。
著作権はこれら作品の作者にあります。無断転載・複製・再配布などは行わないでください。

 

 

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